蓬莱 熱海の旅館

熱海の老舗旅館「蓬莱」に行く。
日本で数少ないRELAIS & CHATEAU のメンバーのこの旅館は、熱海の地に建つというより、熱海の地に在るという方が表現としてあっていると思わせるような土地との一体感がある旅館だ。今のご主人が五代目ということなので、その長い歴史の中で紡ぎだされた「日本旅館」という文化の集大成がここにあると言っても過言ではないだろう。
「蓬莱」はRELAIS & CHATEAUの「おもてなし・魅力・個性・静寂・美食」5つの憲章に紛うことない存在である。

この旅館の素晴らしさは、入った瞬間の空気感に表れている。都心から近いだけに、現実と非現実の境界を客が明確に感じなければその人にとって旅行がただのドライブになってしまう。逆に非現実の世界をそこに出現させることができれば、その魔法は客がその門をくぐって外に出て行くまで続く。だからこそ、ここでは客を迎え入れるときの空気感がなによりも大切にしているのだろう。打ち水をされた玄関に、お香の香り、手入れの行き届いた植木、押し付けがましくない女将さんや女中さん、番頭さん達に出迎え。それは、出迎える側が緊張感を持っていないと醸し出すことができないものであり、私達のhideawayはこうして玄関で出迎えられた瞬間から始まる。

「蓬莱」の存在は熱海という地に根ざしている。古くからある老舗旅館であるが、山の中に作りこんだこの旅館は、木を切らずに保護するために廊下に木の幹がせせり出していたり、部屋から外を見ると手が届く距離に鳥の止まり木になっている木が見渡せる。時折聞こえる自動車の音を除けば、波の音と風で葉が揺れる音しか脳を刺激するものはない。変化を感じるのが難しいほど時間がゆっくり流れ、時間の流れがゆっくりに感じるほど変化がない。何百年も昔のことが想像できてしまうほど、「蓬莱」はこの地に深く根ざしている。「蓬莱」のもつ威厳と伊豆の海山のおおらかさが、私をそういう気分にさせたのだろう。

風呂場は二つある。到着した夕方は男性が「古々比の瀧」という隈研吾設計の露天で、女性が日本3大古泉の一つ「走り湯」だった。
まずこの「古々比の瀧」は入った瞬間の清涼感と開放感が私の心を遠くの海へ解き放つ。夕方の熱海の海をみながらそうヒノキの湯舟につかりぽかんとする。モダンな作りではあるが自然との一体感を第一に考えられている。ここの風呂に浸かって海を眺めていると思わずため息がでてしまう。そんな素晴らしい露天だ。しかも、夜の11時から12時までは混浴になっており終了間際に行くと、ほぼ貸し切り状態で使うことができる。普通ならあのような大きな露天を貸しきることなどなかなかできないだろう。しかも、高級旅館だけあって時間になって追い出されるようなことはないので、安心して入っていられる。山の中にあるので、蚊がでることだけは、覚悟しておいて欲しい。翌朝に「走り湯」に入った。ここの方が海が近く、雨が降っていたのでしっとりとした気分を味わえた。

食事のレベルも非常に高い。鯵やとり貝のお刺身など地のものだけなく、稚鮎や煮物などもおいしく頂けた。中でも蓬莱餅と呼ばれる椀物は、蓬の餅のなかに蓬莱の玉のように具が入っており(何が入っていたか思い出せない)、最高の一皿だったと思う。
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ミシュランを意識して作られた温泉の本曰く、ここの女将は日本一とのこと。笑顔が優しく知的かつ謙虚なお姿は、力強い存在感があり、この方の意識の高さがこの旅館を一流たらしめていると感じさせられる。是非また足を運びたい宿だ。

蓬莱
〒413-0002
静岡県熱海市伊豆山750の6
0557-80-5151
http://www.izusan-horai.com/
★★★★★
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by george3214 | 2008-06-12 18:55 | 旅館・ホテル
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